まだ見ぬ嫁を探して

東京外国語大学卒。 自由に書きます。 猟山主理 @shurinporin

金をよこせ

ヒッチハイクで乗り合わせた車はタクシーではなかった。


運転手の男の口調が強くなり始める。

何を言っているかはほとんど理解できないい。

一つだけ聞き取れた単語は「Dinero=お金」だった。


車は出発してから数分すると、道を外れて脇にある茂みの手前で停車した。

車にはぼくと運転手の二人だけで、運転は見た目は30歳くらいのラテン系で表情が堅い男だった。

服装はジーパンに黒のジャケットでごく普通。


拾ってくれてありがとうと礼を述べる。

簡単に自己紹介もするものの、ぶつぶつと聞き取れないスペイン語を少し話す程度だった。

これまでヒッチハイクさせてくれた2人の時とは反応が違った。

けれど雨風の吹き荒れる夜、辺りに何もない見知らぬ土地で20kmほど歩き疲れていたぼくには乗せてもらう以外の選択肢はなかった。



金をよこせと言われたので、「これはタクシーか?」と聞き返しす。

相手の口調がさらに激しくなり、顔面にストレートパンチをくらった。

アメフトをやっていたせいか、自分より小柄な人に殴られることに対する怒りがわき上がる。


とりあえずポケットに入れていた数十ペソを確認しようとポケットに手を突っ込む。

すると相手はジャケットの右ポケットから拳一つ分ほどのナイフを取り出した。


旅立つ前にもしも事件にあったらどうしようという妄想を何十回もしたことがあったけれど

今、現実に目の前で起きている。


けれど妄想した時と大きく違う事が一つあった

相手が突き出しているナイフはそれほど大きいものではなく、

体格もかなり小さめだった。


ポケットの数十ペソを運転手の足下に投げ捨てる。


そこからは本当に一瞬の出来事だった。


足下に落ちたくしゃくしゃのお金に目をやった瞬間

ナイフを持っている右手首を抑えて男のあご下を思いっきり××てやる。

その後すぐに男の股間へ拳を全力で〇〇○○した。


男が悶絶して右手がゆるんだ隙にナイフをもぎ取って外に投げ捨てる。


急いで車から出ると、男もシートベルトを外して出てこようとしたので開きかけたドアを勢いよく閉め返す。

すると手がドアに挟まったような鈍い音と男のうめき声が聞こえてきたけれど、そんなのお構いなしにもう一度半開き状態のドアを開けて顔面に△△を入れ、車の鍵を抜き取り外へ投げ捨てる。


そして後部座席から荷物を引っぱり出して全力で走った。


後ろを振り返るのが怖くてひたすら来た道へUターンして走った。

ザックは重いし揺れるからすぐにバテたけれど、それでも追いつかれるのが怖くて足を動かし続けた。


20分くらい走っただろうか

体力の限界から一度足を止め、おそるおそる後ろを振り返る。

暗くてあまり遠くは見えなかったけれど、少なくとも近くには男や車の姿はなかった。

けれど、まだまだ街まで十数kmはある。


どうしよう


すると遠くから一台のトラックがこっちへ向かっているのが見えた。



Rio Grande市街のホテルより




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コメント

コメント一覧

    • 1. kyoko
    • 2014年03月03日 13:24
    • まだ終わってないみたいだけど、とりあえず命もカメラも守れてよかった(T_T)
      そんな人気のない夜道を歩くなんて、山賊に襲ってくれって言ってるようなもんだもの、アルゼンチンに限らず。夜中は車であってもそんなところ走ったら危ない。
    • 2. あるきはじめ
    • 2014年03月03日 14:47
    • 想定外ではなくて、想定内。今回は、しのげたけど、これはあなただけのプロジェクトではないことを分かって行動してください。危険回避.
    • 3. shuri
    • 2014年03月04日 01:39
    • まさに想定内でした。
      ご心配おかけして申し訳ございません。
    • 4. shuri
    • 2014年03月04日 01:40
    • 荷物も一つ小さいリュックは歩いている途中で捨て置いたのですが
      幸いなことに逃げて戻っているときに再発見することができたので、ほぼ失うものはありませんでした。
      本当に気をつけます。
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